区が“保留床引き取り”で税負担増大
葛飾区内で行われる再開発事業は、港、中央、千代田区の都心部のように民間主導ではなく、**総事業費の約3分の1が補助金(=税金)**で賄われています。
さらに、区が公共施設を入れることで「事業の成立を側面支援」しており、実質的に“税金で支える再開発”となっています。
その典型が、令和3年に竣工した金町駅南口の再開発ビル「ベルトーレ」です。
3階部分が公募でも買い手がつかず、再開発組合の要請を受けて区が約11億円で購入。
これにより「カナマチぷらっと」として整備されましたが、実質的には**“売れ残り保留床の引き取り”**です。その結果、金町には既に中央図書館があるにもかかわらず、類似する公共施設が2つ存在するという、非効率な状況が生まれています。
このように、再開発の採算を区が税金で支える構造が既に現実化しています。
■ 保留床の仕組みが区の負担増に
近年の建設費高騰により、権利変換後に発生した追加コストは、補助金を差し引いた残りがすべて**「保留床(販売用区画)」の価格に上乗せ**される仕組みです。
その結果、区が公共施設として保留床を取得する場合、想定を大きく超える高額な負担となってしまいます。
実際に、新庁舎の取得費が高騰しているのもこの構造が原因の一つです。
■ なぜ庁舎を再開発に組み込んだのか?
そもそも、新庁舎を立石駅北口再開発事業に組み込んだ背景には、北口と南口の再開発を合わせると3棟ものタワーマンションが建つ計画となり、立石という地域の規模から見ても、これ以上マンションを増やすことが難しかったという事情があります。
つまり、マンション以外で保留床を埋める必要があり、その結果、従来同様に**「庁舎」という区の施設を再開発に組み込み整備した**のではないでしょうか。このように、事業の成立のために公共施設を“入れざるを得なかった”構造自体に問題があります。
■ “青天井契約”で区民負担が拡大!
さらに問題なのは、立石駅北口再開発事業の契約後の工事費の物価上昇分の扱いです。同じ再開発事業で1つの契約書でありながら、タワーマンション・商業がメインの西棟は基本的には契約時の金額で協議もできるのに対し、**庁舎棟は「物価上昇に応じて自動的に金額が上がる“青天井契約”」**となっています。
区が損をしてもゼネコンは損をしない、極めて不公平な契約です。
■ 今後の再開発は「必要最小限」に!
今後、立石駅南口東街区・西街区、さらに高砂でも再開発の動きがあります。
しかし、これからは
➡ 道路や駅前広場など必要最小限にとどめること
➡ 地権者とディベロッパーが事業として成立する範囲で行うこと
が求められます。
小林議員は再開発事業そのものに反対ではなりませんが、総事業費の3分の1は既に税金投入されており、これ以上区が保留床を買って再開発を支える必要はありません。区が無理に施設を入れて支える再開発は、長期的に区民の財政負担を増やすだけです。
【近年の葛飾区内再開発事業一覧】
| 地区名 | 総事業費 | 補助金 | 区の施設・負担額 |
|---|---|---|---|
| 金町六丁目(ヴィナシス金町) | 262億円 | 75億円 | 中央図書館30億円/駐車場16億円 |
| 金町六丁目駅前(ベルトーレ金町) | 153億円 | 51億円 | カナマチぷらっと11億円 |
| 東金町一丁目西地区※ | 753億円 | 231億円 | 地区センター・ホール19億円/ 駐輪場8億円 |
| 立石駅北口※ | 1307億円 | 431億円 | 新庁舎366億円/ ホール5億円 |
| 新小岩南口※ | 503億円 | 166億円 | ― |
※ 現在事業進行中であり、最終的に増額になる可能性があります。
