―モニタリング制度導入に見え隠れする優先利用復活への布石―
バルサアカデミー葛飾校に関する第三者調査委員による調査結果報告書が葛飾区に提出されたことを受け、4月28日に全員協議会が開催されました。当日は、区から「バルサアカデミー葛飾校に関する第三者調査委員の調査結果に対する今後の対応について」という資料も示されました。
そこで私は、報告書の内容を一つ一つ確認しながら、区が個別の指摘事項を認めるのかどうかを厳しく質しました。
その質疑を通して、区が描いている今後のシナリオが見えてきました。
それは、報告書の指摘事項を認めながらも、その総括や責任の整理を十分に行わないまま、モニタリング制度を導入することで、結果としてバルサ葛飾校の優先利用を再び認める方向へ進むことではないか、ということです。
では、今回の質疑で明らかになった主なポイントを順に整理します。
1.過去の協定締結は「明確な選定基準がないまま」行われていた
報告書53ページでは、実績のない団体への便宜供与には慎重さが求められることが指摘されています。
また、報告書10ページでは、当時の政策企画課長がキッズチャレンジ未来の関係者らと視察を行うなど、特定の関係者と行動を共にしていた事実も記載されています。
私は、こうした状況を踏まえ、
「客観的な評価基準に基づく協定締結だったと説明できるのか、それとも明確な基準が存在しなかったことを認めるのか」
という二択で簡潔な答弁を求めました。
これに対し教育次長は、
「当時、協定締結に当たって、こうした物差し、例えば、これをクリアしていくといったような明確な文言としての基準、それは存在していなかったことは事実でございます」
と答弁しました。
つまり区は、客観的な選定基準が存在していなかったことを事実上認めたのです。
2.バルサ誘致ありきで進められた施設整備
さらに私が注目したのは、報告書54ページに記載された施設整備に関する指摘です。
報告書では、
「バルサアカデミー葛飾校の誘致の必須条件として挙げられていた施設整備や補正予算スケジュールは、バルサスクール開校スケジュールを念頭に進められた」
と認定しています。
さらに、
「これらの整備事業はキッズチャレンジ未来又はバルサアカデミー葛飾校の利用の便宜に供される側面が相当程度の割合を占めていたことは否定できない」
とも結論付けています。
私はこの点について、
「施設整備が特定団体の利用便宜に供されていた側面を区として否定するのか」
と質しました。
これに対し教育次長は、
「否定できないという文言を踏まえて適切に対応していく」
と答弁しました。
つまり区は、施設整備が特定団体の便宜に供されていた側面を否定できないことを認めざるを得なかったのです。
3.継続性の検証を欠いたまま進められた協定
報告書56ページでは、
「事業を実現することの意識が先行し、事業の継続性についてはほとんど配慮されていない」
「区のチェック体制として適正であったとは評価できない」
と厳しく指摘されています。
私は、継続性の検証を行わなかった当時の意思決定に重大な課題があったことは否定されないのではないかと質しました。
これに対し教育次長は、
「こうした仕組みがなかったからこそ財団の経営破綻といった事実があり、事業の継続という視点が欠落していたことの現れなのではないか」
と答弁しました。
区はここでも、事業の継続性の検証が欠落していたことを認めました。
4.区長への直接要望で拡大された「協定に記載のない優先利用」
報告書22ページには、キッズチャレンジ未来側が青木区長へ直接申し入れを行い、その後、水元多目的広場の優先利用が開始された経緯が記載されています。
また報告書50ページでは、
「葛飾区体育条例施行規則第6条に基づく適正な手続が確保されていない重大な問題が認められる」
と指摘されています。
私は、この優先利用の拡大経緯について区に事実確認を行いました。
私が「直接の申出を契機として優先利用が開始された事実は否定されないか」と質したところ、青木区長は「基本的にはこのとおりだというふうに思っております」と答弁しました。
さらに、「継続的に適正な手続が確保されていなかった点は否定されないか」と質したところ、教育次長は「そのとおりだと認識しております」と明確に認めました。
つまり、区長への直接の申し入れを契機として、協定に記載のない水元多目的広場の優先利用が追加され、その後も適正な手続が確保されていなかったことを、区は否定できなかったのです。
5.「協定ビジネス」の本質から論点をすり替える区の姿勢
今回の問題の本質は、区が与えた「優先利用権」という行政上の便宜が、事業譲渡に伴い経済的価値として取引された可能性が報告書36ページで指摘されている点にあります。
報告書では、
「グラウンドを優先的に利用できる利益と譲渡代金との間に対価関係があることを否定できない」
と明記されています。
しかし区側は、
・契約自由の原則
・当事者の内心は把握できない
・両論解釈が可能
との説明を繰り返し、「区が事業譲渡を把握できていなかったことが本質的な問題」との立場を取り続けました。
私は、
「そもそも区が不適切な優先利用を認めなければ、このような経済的価値が発生する余地はなかった」
と指摘しましたが、区は最後までこの論点に正面から向き合おうとはしませんでした。
6.なぜ優先利用を急がなければならないのか? 検証が先では?
そして私が最も注目したのは、区が示した今後のスケジュールです。
区はモニタリング制度を導入した上で、令和8年10月に新たな協定を締結する予定を示しています。
私は、この不自然なスケジュールについて質しました。
団体も確定していない段階で、なぜ協定締結時期だけが示されているのか。現在グラウンドを利用しているアメージング社(バルサ葛飾校を運営する事業者)を前提としたスケジュールではないのか。
この点について教育次長は、「ゼロベースで全ての団体を考えていきたい」と答弁する一方で、「最速のスピード感を持って事務を進めていきたい」とも答弁しました。
建前ではゼロベースと言いながらも、協定締結に向けたスケジュールだけは既に示されているのです。
区は報告書の指摘を認めながらも、その責任や総括を十分に行わないまま、「モニタリング制度」という新たな仕組みを根拠に、優先利用を再開する方向へ進もうとしているように見えます。
今回の質疑で特に注目すべき点は次の3点です。
① アメージング社を協定対象から除外するとは、区長も教育委員会も明言しなかったこと
② 肝心の「団体の選定基準」や「審査制度」の細部はまだ確定していないこと
③ 「令和8年10月の協定締結」というスケジュールだけは既に示されていること
こうした経過を見ると、「まず協定締結ありき」で制度設計が進められているのではないかとの疑念を抱かざるを得ません。
私は全ての団体の優先利用を否定しているわけではありません。
しかし、第三者委員会報告書で行政の便宜が経済的価値として取引された可能性まで指摘された事案に関わるアメージング社については、少なくとも現時点で優先利用を認めるべき状況にはないと考えています。
税金で整備された公共施設が、特定の事業者の利益のために使われていると受け止められるようなことがあってはなりません。
区は本当にゼロベースで検討するのか。それとも結論ありきで進めるのか。
令和8年10月に向けてどのような制度設計が行われ、どの団体が対象となるのか。
私は今後、区から提示される「団体の選定基準」や「審査制度」を厳しく検証するとともに、その内容を区民の皆様に報告してまいります。
資料

