理科大と葛飾区の汚染土処理費用請求訴訟

6億円の和解へ――区は「URには請求できない」と知っていた

葛飾区が東京理科大学に6億円を支払う。その和解議案が、今定例会に提出されています。6億円は全額、一般財源から支出されます。

9月15日の本会議で、私はこの件について一般質問を行いました。区長、総務部長、政策経営部長から答弁がありました。


何が起きたのか

議事録の全文は別の記事に掲載しましたが、長いので、要点をまとめます。

東京理科大学の葛飾キャンパスの土地は、もともと三菱製紙の工場跡地でした。URが取得・整備し、葛飾区土地開発公社を経て区が取得し、平成30年に20億8,800万円で大学へ売却しています。

大学が校舎を建てる際、地中深くから自然由来のヒ素等が基準を超えて検出されました。大学は、汚染除去費用として約7億8,400万円の支払いを求めて区を訴え、東京地方裁判所から和解の勧告があり、区は6億円を支払う和解議案を提出しました。

ここで疑問が二つあります。

なぜ区が払うのか。そして、区がURから取得したときの契約には瑕疵担保の定めがあったはずなのに、なぜURに請求しないのか。


今回の答弁で明らかになったこと

区は、URに請求できないと知っていました。

平成30年当時も自然由来の土壌汚染について、URに求償できる契約上の根拠はないものと認識しており、求償可能と判断していたわけではございません」(総務部長)

平成30年2月に大学へ売却する、その時点で、区は自然由来の分をURに請求できないと分かっていた、ということです。

しかし、そのことを議会には説明していませんでした。

平成30年当時の総務委員会では、その点について特段の説明を行わなかったものと理解しております」(総務部長)

私は平成30年1月15日の総務委員会で、この土地について「最終的にはURが、全部払うということで間違いないでしょうか」と念を押しました。

当時の政策企画課長(のちの副区長)は「最終的にもし、求償すべき内容が出てくれば、求償されるものだというふうに認識をしております」と答弁し、契約管財課長も「基本的に区は、URのほうに求償していこうというふうには考えてございます」と答えています。

区は、自然由来の汚染土についてはURに請求できないと認識していました。しかし、その重要な例外を平成30年の総務委員会では説明しませんでした。私は、当時の答弁を前提に、本件契約案を了としました。

当時「URと協議中」と説明していた協議にも、自然由来は含まれていませんでした。

「自然由来の土壌汚染に関し、URに負担を求める具体的な協議を行った事実はございません」(総務部長)

そして今後も、URには請求しません

「汚染除去費用6億円の全額又は一部について、今後URに負担を求める考えはございません」(総務部長)

区は、契約に基づく支払義務があったことを認めて支払います。

「本件契約に基づく支払義務があったことを認めて汚染除去費用として支払うものでございます」(総務部長)

和解議案の条項は「平成30年2月23日付土地譲渡契約書に基づき汚染除去費用として、金6億円の支払義務があることを認める」となっています。支払義務の有無を曖昧にしたままの和解ではなく、契約上の支払義務があったことを認めて支払う、という整理です。


では、なぜこうなったのか

契約のリーガルチェックについて、記録から確認できません。

区は「重要な契約を締結する場合には、原則リーガルチェックを行うこととしています」と答弁しました。

ところが、その記録についてはこう続けています。

平成20年2月27日の土地開発公社とURとの契約、平成23年11月1日の東京理科大学との第2回契約につきましては、当時の記録が残っていないため確認することができません」(総務部長)

今回の和解の対象である平成30年の第3回契約についても、

「第1回契約から第2回契約に引き継がれたもの、引き継がれなかったものという視点でリーガルチェックを行った記録はございません」(総務部長)

作っていたかどうかも分からない

私は再質問で、平成20年と平成23年の「記録が残っていない」というのは、当時から作成していなかったのか、それとも作成したが保存されていないのか、どちらなのかを尋ねました。

答弁はこうでした。

その記録があったのかなかったのかというところも、ないので確認はできない」
「作っていたかどうかも含めてなんですけれども、私には分からない
」(総務部長)

作成していなかったのか、なくしたのか。そのどちらかすら分からない、ということです。

当時どのように法的な確認を行ったのかを、記録から検証することができません。

なぜ「大学の負担」という記載が消えたのか

平成20年の公募時、区が示した物件説明書には、自然由来の汚染土壌の処分費用は「選定法人の負担となります」と明記されていました。選定法人とは、東京理科大学のことです

ところが平成23年の第2回契約の際、区はこの記載を削除しています。

なぜ削ったのか。区の答弁は「記載を整理したものであり、リスク分担の原則を変更する意図はなかった」というものでした。

なお、これとは別に、私が決算審査特別委員会に伴い区へ資料要求を行ったところ、平成23年に物件説明書の記載を改めた理由が分かる文書について、区からは「存在しない」との回答がありました。同じく、和解に至る原因分析に関する文書、解決金6億円の算定根拠が分かる資料も、いずれも「存在しない」とされています。


区長は「問題があった」と認めました

区長は本会議で、こう答弁しています。

土壌汚染対策法の改正に伴う契約見直し時や平成30年の契約時に、物件説明書で開示していたリスク分担を契約書本文の明確な特約条項として反映できなかったこと、これらの内容についての大学側との意思疎通が不足していたこと、法務審査のプロセスなどに問題があったと分析をしております

裁判所も、和解を勧告した理由として「契約文言が不足しており」と指摘しました。

契約書というのは、後から争いにならないよう、誰が何を負担するのかをあらかじめ決めておくためのものです。

URが払わないと分かっていたのなら、区が払うのか大学が払うのかを、契約書に一行書いておけばよかった。少なくとも、今回のような費用負担をめぐる争いは避けられたのではないでしょうか。

せっかく大学誘致を行い、東京理科大学に来ていただいたのに、こういう形になったことが残念でなりません。


これから

和解議案が可決されれば、6億円は区民の負担となります。

9月25日の総務委員会、10月5日の決算審査特別委員会・第1分科会で、引き続き確認してまいります。